ニヤンタ、 十月のトラウマ

イメージ 1
  ニヤンタ、 十月のトラウマ 
 
  猫も犬もデリケートだ。ストレスで脱毛した犬のことや、ストレスで自家中毒を起こした猫の話も聞いた。
 わが家のニヤンタは空腹でも餌をがっつくのでもなく、じっと根気強く(しゅうねんぶかいのかなあ)餌入れの器の前で待ち続ける。
 夜、飼い主が眠っている間に好物の袋をかじって勝手に食べてしまったという話もよく聞くが、ニヤンタはそういう悪戯もしない。ふざけてカプッとかみつくけど。あれはいやだね。
 
 わが家の飼い猫になって四年がすぎた。日ごとに甘えん坊になって猫撫ぜ声で鳴く。
 ことに十月を迎えると猫守や家族にくっついて離れない。少しでも姿が見えないと甘い声で私たちの姿を捜しまわる。
 息子がニヤンタを拾ったのが十月の中旬、曇っていて十月にしては生暖かい日だった。
 ガリガリに痩せて、足元も定かでない。目は糸のように閉じ、誰かを待っていたらしく、その場所から連れてこられたことが不安でならないという風に、怒って怖い声で唸っていた。
 獣医さんは「ははあん、こいつはどうやら親猫から猫流行性感冒ウィルスをもらっているな。親猫も兄弟も風邪で死んでひとりぼっちになったらしい。貧血もひどい」と診立てた。
 親兄弟を亡くして、ひとりぼっちで彷徨っていたらしい。その心細さ、飢餓、恐怖。
 ニヤンタの心に十月は悲しみを残したらしい。毎年、十月になると妙にべたべたすり寄って離れない。猫も、トラウマをかかえて必死なんだ。
 朝晩が冷え込むようになるとしゃきっとするのだ、ニャンタは。