2015-06-01から1ヶ月間の記事一覧

馮燕の侠気(おとこだて)上

馮燕の侠気(おとこだて) 唐の馮燕(ふうえん)という者は魏州の豪(おとこだて)だ。父祖は名もない庶民だ。 燕は若いころから任侠を気負っていた。もっぱら撃毬、闘鶏の戯れに明け暮れる日々だった。魏の市で財を争って殴りあう者がいた。燕はこれを聞くと…

道政坊の凶宅

道政坊の凶宅 貞元中(唐・德宗の元号785年~805年)、長安・道政里の十字街東に小さな宅(やしき)があった。毎日、この宅は怪異現象が起きて、ここに住む人は必ず大きな災いに見舞われた。 興慶宮の下の緑線で囲った区画が「道政里」 平凡社『アジア歴史地図…

丁夫人の嘆き(曹操の後庭) 第一百十二回

丁夫人の嘆き(曹操の後庭) 第一百十二回 《あらすじ》 雒陽を制圧した董卓は、少帝劉弁を廃して幼帝(献帝劉協)を即位させる。この暴挙に、袁紹を盟主に仰ぐ董卓討伐の義軍が起こった。義軍の意気たるや軒昂だが、内心は董卓を恐れて、勇ましく酒盛りをする…

死後の貞操

死後の貞操 新繁県の県令(長官)の妻が亡くなった。 県令は縫物ができる女たちを集め、喪中に着る服を縫わせた。その女たちのなかに、とてもたおやかで美しい婦人がいた。 県令はたいそう彼女が気に入り、この婦人を留めて家に帰さなかった。 彼女は県令から…

白い項(うなじ)の烏

白い項(うなじ)の烏 契丹(きったん)が都を犯した初め頃のことである。各地に群盗が蜂起し、戎(えびす)の人はこれをくるしんだ。 陳州にとある婦人がいた。賊の首領になり「白項烏(はくこうう)」、つまり白い項(うなじ)の烏(からす)と名乗っていた。 女盗賊の…

虎の婦(つま)

虎の婦(つま) 唐の開元中(713年~741年)のことである。 虎が人家の娘を連れ去って妻にした。虎は深山に室を結(かまえ)て住んだ。 二年たったがその婦(つま)は少しも悟らなかった。のちに突然、酒を携えた二人の客人が訪ねてきて、この家で酒盛りをした。この…