2015-11-01から1ヶ月間の記事一覧

妖(もののけ)の涙――小説玉璽物語 六

妖(もののけ)の涙――小説玉璽物語 六 悪人が必要なときもあるのか――。玉座の精の言葉に心がざわついた。端正な顔とは裏腹の、小汚い行いをさらりと言ってのける。やはり妖物だ。妖物が本性を現した。彼が品のない音をたてて人を食らう様子を思い浮かべ、私は…

妖(もののけ)の涙――小説玉璽物語 五

妖(もののけ)の涙――小説玉璽物語 五 私の予感は当たった。なんと愚かな男だろう。けれどもこのような種類の男は多い。 王憲は不遜にも東宮を宿舎にした。城を制圧した指揮官は、まず府庫の封鎖を命じて帳簿につけさせ財宝を略奪から護らねばならない。潔癖な…