2011-04-01から1ヶ月間の記事一覧

丁夫人の嘆き(曹操の後庭) 四十九

丁夫人の嘆き(曹操の後庭) 四十九 「なんと! 知己ではなかったとな……」 夏侯惇が絶句した。 「思慮深い子許が、のう」 曹洪が首をかしげた。 「子許はわしより年下じゃが軽挙妄動する男ではない。何大将軍や三公、董卓のお召しにも応じなかった。仕官をこと…

さくら幻想紀行  摩訶不思議の都 慶州 下

さくら幻想紀行 摩訶不思議の都 慶州 下 むかし、都に麗しい女がいた。人は彼の女を桃花女と呼んだ。新羅第二十五代の王、真智王は桃花女に心が動き、挑んだ。 拒んで桃花女は「わたしには夫がいます。貞節な女は二夫にまみえぬもの」といった。 「殺されて…

さくら幻想紀行  摩訶不思議の都 慶州 上

さくら幻想紀行 摩訶不思議の都 慶州 上 桜が咲く頃になると、てくてくと歩き回りたくなる。何処かへ行きたくなる。 こちらの桜が葉桜になった頃、韓国の慶州の桜は満開になる。新羅の古都慶州はそこかしこ瑞雲か花かと見まごうばかりの桜の波である。ソメイ…

丁夫人の嘆き(曹操の後庭) 四十八

丁夫人の嘆き(曹操の後庭) 四十八 そうそう、弔民伐罪といえば子脩は子供たちに「千字文」を教えている。つい先ごろ、そのなかの『弔民伐罪』のくだりを子供たちに暗誦させていたところだ。大きな声で「周の武王は暴虐で名高い殷の紂王を伐って、虐げられ…

丁夫人の嘆き(曹操の後庭) 四十七

丁夫人の嘆き(曹操の後庭) 四十七 軽く唸ると洪(子廉)は額に皺を寄せた。唸ったわりには冷静な目を孟徳にむけた。探るような洪の視線を顔の筋ひとつ動かさずに孟徳ははじき返す。 時として、曹家の人々は心とは裏腹な言動をとるので油断ならない。決してそれ…