妖(もののけ)の涙――小説玉璽物語 九 「冀州牧の韓馥(かんふく)という男、ずいぶんと袁紹を嫉妬しているそうね」 杏姐さんが口をすぼめて品良く笑った。笑いながら身をよじったので杏の梢が揺れ、物思いに耽っていた私は枝から転げ落ちそうになった。人の姿を…
妖(もののけ)の涙――小説玉璽物語 八 月に誘われたのか胡笳(こか)の音が流れた。 胡笳の音はなぜこんなにも哀しいのだろう。そう、あれは人煙まれな砂漠を旅する者が、人恋しくて寂しくて人を求めて叫ぶ心そのものだから、哀しくて寂しい音色なのだ。月が美し…
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