2010-06-01から1ヶ月間の記事一覧

丁夫人の嘆き(曹操の後庭)  十一

丁夫人の嘆き 十一 豹の身のこなしとは胡娘のことだ。寒くもないのに体が震えてとまらない。決まり悪そうに胡娘は跪いてしきりに詫びた。 「いやいや、奥が悪い。一言声をかければよいものを」 言うが早いか孟徳は腹を抱えて笑い出した。きっと後で「おまえ…

丁夫人の嘆き(曹操の後庭)  十

丁夫人の嘆き 十 子脩が石経を写したいと言う。董卓のことが気がかりだったので、わたしも付きそうことにした。母上は子脩をまるで子供扱いだと拗ねながらも、子脩は拒まない。露払いの小者を先頭に牛車は大路を南へと進む。疲れを覚えたころに車は城南の開…

丁夫人の嘆き  九  (曹操の後庭)

丁夫人の嘆き 九 何(進)大将軍の命令を受け、董卓が都に向かった。 多少手荒いが、これで何太后も中官どもの大掃除に賛成するに違いないと、おおかたの都の人士は世直しの期待に胸を躍らせていた。さんざん痛めつけられたから、正義感だけではない、世直しは…

ニヤンタの妄想

ニヤンタ「おーほっほ。おーほっほ。いい、鰹が手に入った」 猫守 「ニヤンタ、白鳥麗子風の笑い方、似合わないよ。それに鰹じゃなくてそれ、 お兄ちゃんの水槽のタナゴじゃない?」 ニヤンタ「さっきからニャーニヤーうるさいわね。猫とばかり遊んでいる人…

丁夫人の嘆き  八  (曹操の後庭)

丁夫人の嘆き 八 朝廷から戻ってきた孟徳は頬に疲労の翳りがみえた。 「袁本初(袁紹)は焦れていた。大将軍は眉間に皺を寄せて空を見据えるばかり。これじゃ話にならぬわ。本初は是が非でも董卓を呼びたい。なのに、肝心の命令がでない」 「中官の様子はどう…

丁夫人の嘆き 七   (曹操の後庭)

丁夫人の嘆き 七 子脩は少年といってもまだほんの子供だが、学問に早熟な才をあらわし、「いざのときには母上を護る」とうれしい事を言って、武芸の腕を上げていく。射的場で、棚にならんだ的の虎を見事に射てゆき、わたしを喜ばせる。 卞氏は譙の実家にもど…

渋いカーディガンの思い出

毎年、父の日が近づくとほろ苦い思いをする。 父が亡くなって久しいというのに、父と過ごした楽しかった思い出より、あのときの苦い思い出が鮮やかによみがえる。 父は昔からお洒落だった。 普段着でもとても高価なシャツを着こんでいた。若い人は何を着ても…

丁夫人の嘆き 六  (曹操の後庭)

丁夫人の嘆き 六 史侯が即位して一月も経たぬ五月六日、何進は政敵である驃騎将軍の董重がいる役所を兵で囲み、重を捕らえるて解任した。重はこれを気に病み自殺した。重は董太后の兄の子である、為政を牛耳るつもりだった董太后は後ろ盾を失い、まもなく軟…