2011-11-01から1ヶ月間の記事一覧

丁夫人の嘆き(曹操の後庭) 六十二

丁夫人の嘆き(曹操の後庭) 六十二 「目覚められたか」 押し殺した曹洪の声がして、無骨な温かい手がぎゅっと孟徳の手を握り締めた。 「ああ、その声は子廉(洪)だ、生きておったか……」 「当たり前じゃ。呼んでも起きんから心配したぞ」 「そうか……、わしは星…

丁夫人の嘆き(曹操の後庭) 六十一

丁夫人の嘆き(曹操の後庭) 六十一 金の粉をまき散らしながら、星は袁紹を追った。冴えわたった天空は箜篌(くご)の弦さながらに泣いた。 孟徳は歌った。 天下に男(お)の子ありて濁れる世を憂う 春の川辺に人知れず咲く薫り高き蘭よ わが意気は蘭に似て気高く…

丁夫人の嘆き(曹操の後庭) 六十

丁夫人の嘆き(曹操の後庭) 六十 孟徳は星に跨っていた。 ずっと昔から慣れ親しんできたように、星は孟徳の意のままに動いた。 昔、龍を飼いならした『龍使い』がいたが、わしのように星を駆使する『星使い』というのもなかなかよい。 「博労がみつけてくる馬…