悲しすぎるわ 人材を見抜けないなんて

息子がニャンタを保護した思い出の元勤務先。
そこで息子は、睡眠時間四時間という毎日が続いた。
ほとんどが、上司がしでかした失敗の後始末に時間を取られ、サービス残業の毎日だった。肝心の上司は十時ごろにちゃっかりと帰っていく。
日ごとにやつれていき、目の下に黒い隈ができる息子に、猫守ははらはらしていた。
息子を過労で亡くすくらいなら、会社をやめてもらおう、そう決心していた。
そして、「仕事が、仕事がと」うわごとのように繰り返す息子を説得して、その会社を辞めさせた。


あの町工場の創業以来から勤めてAさんが、自殺したと息子から聞いた。
定年まであと二年だったそうだ。
猫守はAさんがどんな人だったか知らない。
毎年、田舎の実家で作っているお米を分けてもらっていた。
とてもおいしいお米で、冷めても堅くならないのでおにぎりにしておいしく頂いたものである。もちもちしておいしかった。

Aさんは一生懸命仕事をする人には、とてもやさしかったそうだ。
ご本人も創業以来の社員ということで、会社の重鎮を自負しておられたことだろう。
ところが、息子を酷使したあの上司に、Aさんは徹底して嫌われ、いじめられた。
それでもがまんしてきてのは、
会社とともに自分はある、この会社を育て発展させてきたのは自分だという自負心があったからだと思う。

この不況である。会社が退職者を募った時、Aさんは真っ先に応じたという。
そして、先月の下旬、焼身自殺してしまった。
ご遺族は、とても怒って会社関係者の葬儀参列を拒否されたそうだ。
「せめて亡くなられたところにお花でも供えたい」という社長の嘆願も拒絶された。
花を供えて社長の気持ちは少しは癒されるかもしれないが、
Aさんは戻ってこない。

ご遺族の怒り、無念
猫守にはよくわかる。
このような荒波に翻弄されている猫守だが、あのとき猫守が母ちゃんパワーを発動して、息子をやめさせなかったら、
息子だってどうなっていたかと思うと、ぞっとする。

鳥無き里の蝙蝠という。
これといった人物のいないところではつまらない者がはばを利かすということわざである。
蝙蝠にとっては失礼な諺であるが、
あの要領ばかりよくてゴマすりの、つまらない上司に会社をまかせ、恐怖政治を実行したツケ、と言い切るにはあまりにも悲しすぎて、残念だ。
労働監督基準局とか労組などに訴えることはできなかったのか?

人間の存在を否定する陰湿ないじめ、
いじめは大人も子供も壊していく。

決して許してはならない行為なのに、おそらく人類発生と同じくらい古い歴史をもっているらしい。