猫女はどこにでもいるのね

            猫女はどこにでもいるのね
 
 Tさんのご近所は増えすぎた野良猫に悩まされている。
 野良猫のいるところ、必ず餌をやる人間が出没する。
 無類の猫好き、お腹をすかした猫が哀れだとか理由はいろいろあるだろうが、猫を思うあまりに人間への配慮が欠けてしまうらしい。
 夜の八時を回ると、そのあたりの野良猫たちはそわそわと人待ち顔に道路のあちこちに姿をあらわす。どの猫もみな痩せている。彼方からリュックサックを背負った年配の女性が内またで歩いてくる。どこにこんなにいたのかと思うほどの猫が、中古車販売会社の植え込みの前で待っている。ここが第一のえさ場。角を曲がった清涼飲料水の自動販売機の前で数匹がという具合に、五百メートル圏内に五、六ヶ所のえさ場がある。おかっぱ頭の彼女と太った大柄な五十年配の女性が夜な夜な、合計七ヶ所くらいで餌を与えているらしい。
 おかっぱ頭の女性は、家から水をもってくるのが重いので、付近の民家の水道を無断で拝借してペットボトルに満たし、野良猫に飲ませる。翌朝、あたりは猫の食べ残した餌がちらばっているわ、糞害で惨憺たるものだ。痩せた野良猫でも、やはり律儀に子を生み、増殖していく。
 
たまりかねて「猫に餌をやらないでください」といったら、睨まれたそうだ。
 
 その周辺では苦情が絶えない。野良猫にも生きる権利はある。うちのニヤンタの親猫はそのようにして命をつなぎ、ニヤンタを生んだのかと思うと愛しくさえなる。でも、これ以上猫が増えないように、市役所のほうでも避妊手術をするとかして手を打ってくれないだろうか。町のほうぼうで住民が悲鳴をあげているのに。