ムカと野良猫
ムカと野良猫
今日から定例のバイト。
集金先のT奥様が珍しいでしょと、
みたこともない木の実を下さった。
長さ八センチ、皮は少し柔らかい。
切ってみると
黒い粒粒は種です。小さな柿の種みたい。
あけびの一種でムカという名だそうです。種のまわりは食べられますが、
奥様いわく「啜る程度ですよ」と。
話のタネに私も後で啜ってみます。
余談ですが、話のタネに中国に旅行したときはサソリのから揚げ食しました。お味は沢ガニのから揚げを食べているような感じ。みんなこわごわお皿をながめていたのですが、「話のタネに」と食べて「沢ガニみたい。おいしい」と感想を述べると、他のツァー客が一斉に箸をつけ、あっという間にみんなの胃袋に消えちゃったわ。
もうひとつ余談ですが、やはり中国旅行の思い出にカエルのてんぷらを食べました。旅程の都合で夜の十時頃に山西省永済県に着いたのです。田舎のこととて、食堂らしい食堂などありません。事前に手配して開けておいてもらったこじんまりした食堂で目の前でてんぷらを揚げてくれる。皿に盛られたアツアツにパラパラと塩をふって食べた。なすびのてんぷららしいが、太めの爪楊枝、和菓子なんかについている上等の爪楊枝のような骨らしきものがついている。おかしいな、これなんだろう?でも、おいしい。なすびのてんぷらがこんなにも美味しいなんて。空腹なんだわ、私。
「おいしかったですか?」
実直そうな中国人ガイドさんが訪ねた。
「おいしかったわ」
「うまかった」
それぞれ満足そうに答える。
「骨みたいたのがついてましたね。あれはなんでしょう」
「カエル。カエルです」
「えっ……」
「……」
「この土地の名物料理です」
私たちの驚愕をよそにガイドさんは得意そうだった。食用ガエルのもも肉だったのだ、でも淡白でおいしいかった。
さすがに蛇と犬は辞退した。お肌がつるつるになるよと言われたツァーの女性は、蛇のスープを何杯も飲んでいたっけ。美への執念の凄さをしみじみと感じたものでした。
ムカを下さったT奥様は広い庭付きのお宅に住んでいらっしゃるので、野良猫のたまり場になって臭い落し物に悩んでいらっしゃる。気が付いたら野良猫がお庭で子猫を三匹も産んで、追い払おうとしても子猫をじっと抱いて動かないそうだ。
猫のオッカサンにしたらここは天国、大好きな土があって車もこない。寒さもしのげる。おいそれと立ち退く気はないだろう。そのような心構えじゃないと生きていけないものなぁ。悩ましい問題だ。これ以上、猫が寄りつかないようにこれからクレゾール石鹸を買いにゆかれるそうだ。犬の糞害にも悩まされていらしゃるというから、効果ありそうだ。庭のあるお宅ではどこも野良猫に悩まされている。