猫も息子もよく嘘をつく

                 猫も息子もよく嘘をつく
 
 この頃、愛猫の抜け毛を集めてフェルトにしてケータイカバーを作る猫好きが増えてんだって。
息子は得意そうにいう。
「嘘だ」
「ほんと。ネットで見たよ。ニヤンタの毛をフェルトにしようっと。きれいなシマシマのカバーができるよ」
「嘘だ、嘘だ」
 シマシマで嘘がばれている。抜け毛集めても黒っぽい固まりができるだけで、シマシマ模様なんかできない。そんなの作ろうと思えば、来る日も来る日もピンセットで一本づつ毛を並べて縞を再現しなければならぬ。しかもフェルトとなると縮み加減、からまり加減でどうなるかしれたものではない。毛並みを刺繍するほうがまだ早い。
「ほんとだってばー」
 性懲りもなく息子は主張する。四月一日じゃあるまいし。
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 この鯖のような柄、ピンセットで一本一本並べて再現できますか?
 
 こんな息子に鍛えられたニヤンタである。騙しのテクニックを習得してしまった。
餌入れの前に座り込んで「アーニャ」と可愛く鳴く。わたしにはママって聞こえる。
「さっき食べたばかりでしょ。またなの?かつお節ばかり食べて。これでおしまいよ」
 かつお節を器に盛る。すると「イッヒヒヒ」って感じの顔をわたしを見て、つつつっと小走りで逃げる。あっ、おいかけっこしたかったので、わたしを騙したのだ。
「こらっ。騙したのね」
 怒って追いかけると、背中の毛を逆立ててぴよんぴよん飛び跳ねて興奮状態。こんな面白いの止められるものかって、体全体で話してくれる。
 ベランダで揚羽蝶を捕まえるときだってそうだ。
 寝そべっていて蝶々を見ない。安心してニャンタの頭上をひらひらとすると、ぱっと飛び上がって捕まえてしまう。
 ああ、息子といい、ニヤンタといい、一筋縄ではいかない。