ニヤンタのおなら?

                ニヤンタのおなら?
 
 ニヤンタと暮らすようになってあと数ヶ月もすれば六年になる。
 この六年近い年月の間、「??? うん、もしかしてこれはニヤンタのおなら?」と思うことがしばしばあった。時には音なんかなくて、なんだか臭う。で、くんくんと臭いを嗅ぐと、ニヤンタは「ママ、へんなことしないでよっ」という感じで、ニヤリとした顔で私を見つめる。時には「ブッ」と音をだす。「えっ」とニヤンタを見ると、あのニヤリとしたふざけた顔で私を見返す。
 
 日曜日もそうだった。「ブッ」ときた。あれれとニヤンタを見る。「なぁーに? ママ」と、ふざけた顔で見返す。長年飼うと犬は飼い主の顔に似てくると言うが、猫はだれに似るのかしらね、この顔。
 そう思いながら洗濯物をベランダに干しに行った。暑かったなぁと戻ってくると一階の廊下に粗相してある。
 「ぎゃあ。ダメでしょ」と、ニヤンタを叱った。ニヤンタは辛そうな顔をした。
 二階の猫砂はどうかしら? 何気なく二階に上がるとその廊下にも粗相だ。後二メートルで猫砂なのに間に合わなかったらしい。きっと、おならでもしてそのままお漏らししたのだ。
 大好きなかつお節も食べないで、味付けもみのりばかりねだる。
「野良さんは何でもたべるのに、贅沢すぎるわよ」なんて嫌みを言いながら、もみ海苔を小さくほぐしてやった。
 三度目の粗相。
 ニヤンタは参ったというふうにぐったりしていた。さっき、ベランダに出ていたけれど「クリスマスローズの葉っぱ食べたのでは?」
 あれは猫にとって毒だという。
 もう少し様子を見て、病院に連れて行こう。
 ニヤンタはひたすらノビている。顔をくっつけると目を細めてじっとしている。
 内蔵がただれて死ぬのかな?
 だっこするとお腹がいたいのか、悲鳴をあげて腕の中から逃れた。
 しばらくするとまた、味付けもみ海苔をねだる。少しだけやる。もっとねだるのを無視した。するとキャットフードをほんの少し食べた。
 粗相も止まった。よかった、よかった。
 月曜日、そこら中を動き回っている。遊んで遊んでと忙しい。試しに塩なしの鮭を焼いてほぐしてやると、一切れ分をぺろりと食べた。
 その日は気をつけていたけれどおならしなかった。
 今日はもっと元気。鮭と海苔をおねだりして走り回っている。
 猫のおならは体の具合が悪いからかしら?