都市伝説のできあがり

             都市伝説のできあがり
  
 へーい、おまっとうさん。一丁上がりぃ~っ。なんて調子で、今日もどこかで怪しくも妖しい都市伝説が生まれている。
 合併合併でふくれあがったわが町の●区は、人口二十万を超えているが、地元の人よりも周辺から流れ込んできた人口が多い。
 
 その一
 さる夫婦ものが閑静な住宅街にある中古の家を買った。スーパーマーケットまで徒歩三分ほどで、道路から奥まっているので子供が飛び出して事故にあう心配もない。隣近所もうるさくなさそうだ。こりゃ、いい。結構な買い物をしたね、夫婦は満足していた。
 引っ越して来て四か月後、あわてて引っ越して行ったのである。
 「えーっ、なんでー」
「でるんやて。これが」
 友人は両手を幽霊のように折り曲げる。
「……」
「おじいさんが出てきて、ものすごく怒るんやて」
「うん、おじいさんがいたけど八年前に癌で死んでる。お葬式だしたけど……」
「こんな気持ちの悪いとこおったらノイローゼなる、健康が一番やから。一日もはやくぐっすり眠りたいちゅうて引っ越しや」
 友人は真顔でいう。
 なるほど。もともとあの家、なんとなく陰気な感じがした。だからといって、なんだか信じられない。
 その家、荷物は運び出したけれど、ご主人らしき人をよく見かける。???
 その隣の家の人にそれとなく聞いてみたけど、やはり人は住んでいるという。
 ???
 へーい、おまっとうさん。一丁上がりぃ~っ。
 
 
 その二
 さる分譲マンションに御用聞きにやってきた人が、ご用もそちのけで開口一番、ハイテンションでのたまはく。
「奥さん。殺人事件があった部屋はどこでっか?」
「ええっ」
「コロシでっせ。コロシ」
「さ、殺人事件なんかあったのですか?」
「なんや知らんのかいな? ここのマンションで人が殺されたちゅうてえらい騒ぎでっせ。その現場みたいから来たのに」
「そんなん知りません。パトカーも来なかったわよ」
「さよか」
 御用聞きはバツが悪そうに帰って行ったそうな。
 こんな噂が広まったらマンションの値段が下がるので、管理組合を通じて抗議しようかと思ってるそうだが、噂を広めた主は不明だそうだ。
 へーい、おまっとうさん。一丁上がりぃ~っ。
 
※その二に関しては、とにかくこの地区に消防車とパトカーがサイレン鳴らしてぐるぐる走り回ったそうです。それで何かしらと思って外へ出て、聞いてみると「マンションで人が閉じ込められて外に出ることができない」と、いうことだったそうです。
 「はしご車やらパトカーでなにごとかと思うたわ」と、八十何歳?の女性がお話くださいました。この騒ぎに尾ひれがついたのでしょうか?
そこからは一キロほど離れているのですがねぇ。ああ、妖しい、怪しい。