猫の集会

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上の写真は公園の野良猫。世話する人がいるらしい。
もう一枚は掃除機ネコパート2の写真。

神秘的です、猫という生き物は。猫はどんなふうにして会話をするのでしょうか。
猫にまでナメラレル猫守のことは、前にかいた「猫の神様」をごらんになればわかるでしょうが、その子猫事件のあと、猫守の噂はノラ猫や飼い猫を問わず、ひろく猫社会にしれわたったらしい。
ある日、たぶん、土曜日か日曜日の夕方だったように思う。
子猫を交通事故で亡くして悲嘆にくれていた牛柄の猫か、お二階のシャム猫だったか忘れてしまった。

ドアを開けると、待っていましたとばかり猫がニャアと鳴く。まるで話しかけるように猫守の眼をじっとみて、ニャアニャア。
「なにか用でもあるの?」
「ニャアニャア」
「うんうん、なぁに」
なんだか熱心に猫守に訴えている。
「ニャアといわれてもなぁ、猫の言葉なんてわかりません」
すると猫は、たったったと猫守の前を歩いて立ち止まり、振り返ってニャアニャアと鳴く。
「ついて来いなの?」
面白半分に猫に近寄ってみた。
するとトットットと歩いて、また立ち止まる。ニャアニャア。
「うんうん。ちゃんとついて来ているか? ついて来てるよ」
そんな風に何度もトットット、ニャアニャアを繰り返して、十メートルほど離れたスーパーマーケットのまで来てしまったのだ。
猫はスーパーマーケットと民家の境界の幅三十センチもない隙間に入った。
のぞいて見ると、紙くずや石ころが散らばっている。境界の突き当たりは建物に遮られて薄暗い。
「なんなの????」
猫がニャアニャアと猫守を呼ぶ。
「ついて来い。どうした? 心配ないってば。ついて来い」
そりゃまあ、ぺたっと壁にはりついて蟹の横歩きでもしたら通れそうだけど、なんだか怪しいヒトだと誤解されません? 猫には許されても人間には許されない。猫には立派な道でしょうけれどネ。
「だめ、だめ、人間はこんなとこ通らない」
「ニャア、ニャア」
知らんぷりして猫守は引き返す。
猫はあきらめてどこかへ行っちゃった。

「ふーん、この間のお礼になんかあげたかったとか?」
「アホカ。猫のお礼なんて、どうせ土のなかに埋めた魚の骨だわい」
子供たちと大笑いした。

数日後の夕方、「王子飢公園(おうじうえこうえん)」という、熊野神宮の参詣道にちなんだ名をもつ、小さな公園のそばを通りかかった。
そのあたりは廃屋にちかい建物が道路の下に並んでいて、なんとなく物淋しい。
「あれ、火葬場のあとじゃないかな」
とにかく、うきうきするような雰囲気じゃなかった。夕闇のせいもあって妙に陰鬱な感じがする。
ふと、公園に目をやる。石のようなものがそこら一面、ポコポコと三々五々並んでいる。
なんだろうと目を凝らした。
猫だ!猫だ!あたり一面、猫、猫、猫。あの牛柄の猫もいた。二階のシャム猫もいた。洗濯ものの間からニャアとオタフクみたいな顔を出す猫もいた。朝、塀の上に寝そべっている猫もいた。しかし、よくぞまあ、集まったものだ。どこにこんなにたくさんの猫がいたのか、びっくりしてしまった。

「それ、猫の集会なんよ」
「猫も集会するの?」
「ママはなんにも知らないわ。あの公園、猫の集会場やで」
「へぇ」
子供たちのほうが猫のことをよく知っていた。
すると、猫守は猫の集会にご招待されたわけらしい。あの狭い境界を通り抜けて集会に連れて行く気だったのかしら。
またもや、家族そろって転げまわって笑った。可愛い。
猫って不思議な動物です。それにしても、人間と猫の境界とは一体何なのか。
思い出すと、今でも笑いがこみ上げてきます。