ひったくりだ!

             ひったくりだ!
 ひったくりにあいました。
 数日前のことです。
 その日は天気予報によると、夕方から大雨らしい。雨雲レーダーをみると雨が降り出すまで数時間はある。
 雨かぁ。レインハットや雨よけの巻きスカート、雨合羽の上着をバッグに入れて、自転車の後ろ篭に積みました。前篭には重い荷物を詰め込んだ鞄をつんでいます。ショルダーバッグをたすきがけにして電動自転車で、いざバイトに出陣。別に太鼓は叩きませんが、この頃の寒いこと、出陣ぐらいの気迫を持って、頭の中で陣太鼓をば打ち鳴らし、外気を切り裂きながら自転車を漕ぐのです。

 坂道の交差点で信号待ちをした。信号が変わったので道路の左側を走っているとすぐに車に追い抜かれた。すると単車が私の側に並んだ。嫌な予感がした。前が空いているのになぜ、私の側に並ぶのだ。しかも二人乗りの単車の連中は揃ってヘルメットをかぶっていない。高校生風の二人、後ろの座席の若いのは学生服の上着に長いマフラーなんか巻いている。
 で、わたしはすっと歩道に入った。すると連中は離れた。というか、さらに速度を落として私の後ろにまわりこんだのかもしれない。
 
 いなくなったので安心して車道にでた。そのとき後ろ篭の荷物、あの雨具が入ったバッグを盗られた。
 例の単車の連中が私を追い抜いていった。学生服の男は右折の合図のように右手をかかしのように突き出していたが、その手には私のバッグが握りしめられているではないか。なんと、私をからかっているのか? それとも運転席の相棒への合図か? なんともまあ憎たらしいではないか。

 呆然と見送る私。せめてやつらの単車のナンバーでも覚えてやろう。ぬ、ぬ、ぬっ。無い。無いのだ。あるべき位置にナンバーがないのだ。ナンバープレートらしい板灰色でのっぺらぼうだ。これじゃ話にならないが、警察に被害届をだした。被害総額は四千五百円相当の品だが、これから年末にかけて物騒で仕方がないものね。

 ひったくりに遭うのもはじめてなら、
パトカーに乗ったのも初体験だ。

 犯人が捕まったら連絡をくれるそうだが、まだ連絡はない。今日は寒さが少しゆるんだ土曜日、夕方から夜にかけてパトカーのサイレンを幾度か聞いた。あの連中が
また、犯行を重ねているのではなかろうか、なんて思ってしまうのだ。
 みなさんも、くれぐれも用心なさってくださいね。
 そのときよりも、あとになってじわっと怖さを感じるような出来事でした。