??? 違うんだけどなぁ

             ???違うんだけどなぁ
 
 飼い猫は人間の言葉がわかると思っていた。
「うん、鰹節が欲しいの?」
 ニャンタに聞けば、「ピンポーン」当たりだよって感じでアーァと鳴く。
 鰹節のビニール袋を開けるカサカサという音に目がキラッと光る。
 目の色が変わるって比喩じゃないのだ、こりゃ実写だとつくづく感じる。とくに真新しい鰹節(削り節です)の袋をハサミで切るときなんぞ、目の色どころか顔つきまでかわり、ニャーァ、ニャーァと甘い声で鳴く。まっさらな鰹節の袋を開けてニャンタの鼻先に近づける。シェフが「これは○△産の花かつおでございまして……」と、説明するような儀式のようなもの。私たちに鍛えられたニャンタはノリがよい。ふむふむと袋に顔をつっこみ
鰹節の匂いをくんくんくん。開封したては格別よい匂いらしい。
すぐに鰹節を賞味する。
 複雑な事は無理だが、日常生活にさしつかえが無い程度に言葉がわかるのだと思っていた。
ところがだ。
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ニャンタは季節によって自分が一番快適な場所で寝る。以前はいろいろとキャットハウスを買い与え、毛布やおもちゃを入れて、ニャンタの気を惹いてみた。けれどニャンタはキャットハウスに二三度入ったきりで、見向きもしない。夏は廊下。冬はコタツの中だ。春と秋はソファや布団の上。
このごろはひどく甘えん坊になって私の膝の上で寝る。重くてかなわない。で、ソファを指さして、
「ジャンプ。ジャンプだ。ほらっ、野生に目覚めろ。ニャンタ、ジャンプ」と、真剣な顔で猫を躾ける。ニャンタはソファをちらっと見て伸びをし、「わかったよ」って感じでトコトコと歩いて私の膝の上にのり、寝そべるのだ。ノリがよいというのか、思わせぶりというべきか、言葉のスイッチが入り間違えたというべきか……ソファといえば喜んで私の膝の上で寝そべる。
「お仕事、お仕事だからお留守番」は、わかる。つまらなさそうな顔で寝そべり出すから。
 でも、ソファが膝の上とは……さっぱりわからないです。