戦うネコと軟弱男子

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「△○△○!」
うん?
息子がなにか叫んでいる。
台所だ、猫守は。大食いの息子のために夕飯のしたく。
牛肉を三日に一度は食べさせないと「あのニャンコは稼ぎが悪いから、まずい餌でも食わせろと思ってるんだ」と嫌味をいう。
すらすらと嫌味が口をついて出るからコワイ。
百年に一度の不況だ、我慢せぇ。
ニャンコとは自分のことで、自分の前世はネコだとのたまう。
ネコならネコで魚が好きかというと、刺身は食べるが、それ以外の魚料理はだめ。
サンマのタツタ揚げ風などダメ。
お魚を食べると頭がよくなるのだ。
「△○△○!」
へぇへぇ。なんでございますか。
広くはないが、換気扇を回していると聞こえない。
手をふきふき、廊下まで来ると、掃除機を持った息子が悲痛な面持ちで叫ぶ。
「ニヤンタがゴキブリを食べようとしてるから、掃除機で吸い込むんや。掃除機のコンセント差し込んで」
なに、ゴキブリ。ゴキブリを掃除機で吸い込んでどうする。掃除機のなかからはいだしてくるか、ゴミを餌にして繁殖するかのどちらかだ。
「そんなもん、スリッパで叩き潰せばいい」
「気持悪い」
ニヤンタはゴキブリにちょい、ちょいと前足でちょっかいを出している。
台所から殺虫剤のスプレーを持ってきてゴキブリにかける。
ニヤンタは尊敬のまなざしで猫守を見る。
動きが鈍くなったところで、スリッパでパン。
ティシュペーパにくるんでポリ袋に入れる、ゴミ箱。
ニヤンタは狩りの成功に、ニタッと笑う。ママとボク狩りをしたぁ~。
ゴキブリはどこ?
ちょうだい、ちょうだい。
くんくん床をかぎまわる。

しかし、まあ。剣士がゴキブリを恐れてどうする。
「お母様、死にに行きます。止めないでください」
「???」
「一つ、武士道とは死ぬことなり……」
猫守がくつろいでいると、突然、甲高い声でびっくりさせてくれますが、極端な矛盾を抱えた軟弱男子だなぁ~。
ニヤンタも戦う相手を選べ。
真夏の宵の悪夢でした。