世につきぬ物は悪事か? その一
世に尽きぬものは悪事かと思えばよいのだろうか? 哀しくなるほど悪事がはびこっている。
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防犯カメラの不審女が今度はドアホンに
妖(もののけ)の涙――小説玉璽物語三十二
劉虞の密偵たちの慌てぶりが気になる。一体、何が起きたのだろう。秩序は城壁の石積みのようなものだ、一つが崩れると次から次へと崩れる。関西では董卓が呂布に殺され、呂布が主権を握ったかというとそうではないらしい。孫堅に荊州を攻めさせた袁術は戦い敗れて孫堅を失い、南陽を棄てて東南に移動したものの根城を得るにはいたらず、揚州に入った。中原を遠ざかった袁術の無念に思いをはせる。
眠れぬ夜を過ごしているに違いない。
公孫瓚は界橋の戦いで袁紹に大敗して幽州に引き上げた。この広い大地はだれを主として戴くのだろう。
休むことなく私は飛び続けた。
「故郷だ、なつかしい薊(けい)だ」
「おお、行く手に広がる城壁が薊城か」
私の背中にくくりつけた袋から螻蛄(けら)と鼠が這い出したにちがいない。
「しっかりと掴まっていてくださいよ、落ちたら命はありません」
「えっへん、心配なさるな。五百歳をすぎたときから面倒臭くて齢(よわい)を数えておらぬが、私はただの鼠ではないぞ」
「おっほん。三百年生きた私もただの螻蛄ではありませんぞ。なんと白頭王どの、私の兄貴分でございましたか。ふつつかな弟でござるがよろしくたのみます」
私の心配などどこ吹く風と仙人並みの長寿を誇示し、幽州の景観に酔っている。
「なんと緑が深い幽州よ。緑の城壁のように山が続く」
「さよう。王もご存じのように山東とは太行山の東をいう言葉ですが、太行の山脈は東へと走り冀州を経て幽州へと続きます。薊城の西側まで太行山脈せまっていて、薊城では西山と呼んでいます」
「ほう。鄴(ぎょう)の北を太行山脈が走っておるが、この地にまで足を伸ばしておるのか。雄大な山だ」
「薊城の北と東は燕山山脈が形作る山のかたまりです」
「うむ、なるほど。紫気たちのぼる美しい地、王者の都にふさわしい地だ。幾筋も河が流れておる、船も通せば穀物も育つよい土地に違いない」
「さよう、豊かな土地です。趙姐さん、もう少し低く飛んでおくれ。長城がよく見えるように」
螻蛄が叫んだ。
落日の影は薄れ、川面は蒼い闇の中に沈み込んでいた。
「空から見おろすとようわかる。薊は王者の都だ。龍脈が走っておる。西から東に向かって三匹の龍が駆けておる」
白頭王が叫んだ。
「うむ。龍だ、龍が東に向かって駆けていますな。ああ、まさに千年王国の都だ」
螻蛄も負けずに叫び返す。
「ややっ、龍の背中に回廊が……。これが長城なのか」
「さよう。長城です」
「あんなに険しい山を越えて騎馬の民は襲ってくるのか」
「やつらの騎馬軍団にはたやすいことです」
「ふーむ。私は山間の茂みでは歩兵が有利だと聞いたが……こりゃ、そうでもないか」
白頭王が唸った。
「おや……」
螻蛄が首を振った。
「変だわ……とても都とは思えない」
私は空高く飛翔した。
「臭いますな。腐臭だ、こりゃ」
白頭王が眉をしかめた。
「大声で泣いている。死ぬのは嫌だと……、非業の死をとげた者たちが哭いている。戦が起こった」
思わず背筋が震えた。
「しいっ。静かに。好学先生よ、妖物の気配に満ちておる。生気を吸われると寿命が縮まりますぞ」
「おお、故郷のこの荒れよう……」
好学が哀しげに呻いた。
幽州第一の都、薊(けい)は灯りもまばらで活気がない。私たちは城外の水神の小さな祠に忍び込んだ。荒れて快適といえないが、一尺あまりの水神像に一礼するとその後ろに身を潜めた。
「趙姐さん、起きてくだされ」
好学が耳元でささやいた。はっとして私は目を開ける。
「しいっ、静かに」
白頭王が私の顔を覗き込んで目顔で合図した。
祠の入り口がぼうっと明るい。月が昇ったのか? 数日前に新月を迎えたばかりだ、月明かりとは思えない。夏の夜があけたのか? 童子が立っていた。光は童子の体からあふれ出ていた。馬のような顔をした女がひざまずいた。
「さ、若君、参りましょう」
「いやだ! 私は死ぬのだね」
「眠るだけですよ。英明な方が現れるまで眠るのですよ」
「本当に眠るだけか?」
「ええ。この私、命にかけて若君をお守りいたします」
女の言葉に童子は頷いた。
「道は遠うございます。さ、私の背に」
言うがはやいか女の体はたちこめた霧につつまれた。霧が晴れると光を背に載せた一匹の龍が空へ昇っていくのが見えた。
「龍だ。初めて龍をみた」
好学が叫んだ。
「あの光る童子は何者だ」
白頭王が私の肩に飛び移って問う。
「おお、行ってしもうたか」
水神の像が声を発した。
一瞬、私たちはぎょっとして顔を見合わせ、それから像の前に額づいた。
「驚かせたな」
「……」
「あの童子は薊の王座の化身じゃ。劉幽州が善政をしいていたので薊の府寺に住みついていたが、劉幽州が公孫伯珪に殺されたのを嘆いて日ごとに影が薄くなっていった。伯珪のような男があの童子を手に入れてはならんので、竜女が燕山に連れていった」
水神はそういって、私たちを不思議そうにみた。
挨拶がまだである。まずは白頭王から挨拶をすることになった。そして螻蛄の好学、私と挨拶が続いたが、水神は私たちを友達として受け入れてくれたようだった。
妖(もののけ)の涙――小説玉璽物語三十一
「けしからぬ。悪い奴らは国を売るのをなんとも思わぬ」
白頭王は憤慨して髭をふるわせた。
「殺せ、殺せ。みせしめだ」
「袁術め、南陽でおとなしくしてりゃよいものを」
千切れとぶ雲のように烏どもは南に渡っていく。