2010-08-05から1日間の記事一覧
丁夫人の嘆き 二十 「いかがなされまし……」といいかけてわたしは言葉をのんだ。当世の男たちに比べると、孟徳はおのれの感情に率直だ。のちに手痛い裏切りにあってから、感情を封じ込めるようになったが、このころは闊達で、一種の感動すら催すほど率直だっ…
丁夫人の嘆き 十九 その日、皇居にもどられた天子は天下に大赦を下し、数ヶ月前に中平から光熹と改めたばかりの年号を昭寧と改元した。 治世の安寧を願っての改元であったが、都には暗雲が垂れこめていた。あの騒動で秦から漢朝に伝わった「伝国の璽(じ)」…