猫ってデリケートですね

ニヤンタは
「味付けもみのり」が大好き。カツオ節も鮭も大好きだけど、味付けのりはこの上もなく美味らしい。
カシャ、カシャと袋を開ける音がすると台所にとんでくる。
味付けのりの袋を開ける音だと錯覚しているのだ。
食べさせないと目を細めて猫守をみつめ、「イヤ~ン」と哀れっぽくなく。

「こんな甘いの食べると糖尿になるよ」
叱りながらも、つい与えてしまう。台所でじっと辛抱強く待つと、美味なる味付けのりにありつけることをよく知っている。

アルバイトに出かける前は、
「ぼく、お留守番?もう、ボロボロだよ、ぼく」
つまらなさそうに、台所の餌入れの前で座っている。
つい、情にほだされてのりをサービスしてしまう。
のりを食べるとさっさとこたつの中にもぐりこんでしまうのだ。

なんだ、お見送りはなしなの?
冷たい猫だ。
なあ~んて思っちゃいけない。
帰ってくると、窓にニヤンタの姿。細い窓枠に座って
そろそろ帰ってくるころだと、待っているのだ。

待っていたのだとそう思いたい。
退屈で外を眺めていたとは思わないことにしている。
「おりこうさんにしていたのね。えらい、えらい」
笑顔で窓の外から話しかけてやると、

耳まで裂けた口をヒーッと広げ、獰猛な牙をむき出しにして笑顔を返してくれる。
凄みがある笑顔だけど、
それもニヤンタの個性だ。
可愛いと思うことにしておこう。

ニヤンタを抱き上げると、ふにゃふにゃ、つきたてのお餅みたいに柔らかくなっている。
日向ぼっこをしているニヤンタを抱き上げたときも、お餅のようにふにゃーっと柔らかかったぞ。
幸せを全身で表しているらしい。
猫はビミョーだ、
犬みたいに派手に感情を吐露しない。
無骨なのだ。だからますます可愛い。
考えれば、猫守の猫バカ度は年々、加速されるようだ。
今年になってからニヤンタは二度も脱走した。
そのたびに、猫守は心配で心配でたまらなかった。
やんちゃな猫を飼うと、心配が絶えません。