2011-01-01から1年間の記事一覧

さくら幻想紀行  摩訶不思議の都 慶州 上

さくら幻想紀行 摩訶不思議の都 慶州 上 桜が咲く頃になると、てくてくと歩き回りたくなる。何処かへ行きたくなる。 こちらの桜が葉桜になった頃、韓国の慶州の桜は満開になる。新羅の古都慶州はそこかしこ瑞雲か花かと見まごうばかりの桜の波である。ソメイ…

丁夫人の嘆き(曹操の後庭) 四十八

丁夫人の嘆き(曹操の後庭) 四十八 そうそう、弔民伐罪といえば子脩は子供たちに「千字文」を教えている。つい先ごろ、そのなかの『弔民伐罪』のくだりを子供たちに暗誦させていたところだ。大きな声で「周の武王は暴虐で名高い殷の紂王を伐って、虐げられ…

丁夫人の嘆き(曹操の後庭) 四十七

丁夫人の嘆き(曹操の後庭) 四十七 軽く唸ると洪(子廉)は額に皺を寄せた。唸ったわりには冷静な目を孟徳にむけた。探るような洪の視線を顔の筋ひとつ動かさずに孟徳ははじき返す。 時として、曹家の人々は心とは裏腹な言動をとるので油断ならない。決してそれ…

丁夫人の嘆き(曹操の後庭)雑記 十七

丁夫人の嘆き(曹操の後庭)雑記 十七 グーグルで見る襄陽城 劉表が拠った襄陽城 襄陽城は湖北省襄樊市の襄陽区にあります。 いつの時代のものか不明ですが襄陽城です。 不明といったのは何度も戦で焼き討ちにあっているからです。 ライトアップされた襄陽城…

丁夫人の嘆き 雑記 十六

丁夫人の嘆き雑記 十六 黄河の河道が変わった だれよりも真っ先に義兵をあげた曹操は陳留郡の酸棗(さんそう)に兵を集結させます。 東漢時代の酸棗は黄河(河水)の南にありました。 太い赤○で囲ったところが酸棗で、太い水色の線が黄河です。 古代の酸棗城…

丁夫人の嘆き(曹操の後庭) 四十六

丁夫人の嘆き(曹操の後庭) 四十六 「厄介じゃのう、敵が増えた」 洪が口をとがらせた。 「おいおい。子廉よ、いつもの頭の冴えはどうした?」 孟徳がにたっと笑う。 この人は困ったときでも笑うのだから……。追いつめられると、稲妻のように閃くらしい。 「…

シルクロードと薔薇のジャム

シルクロードと薔薇のジャム 写真は「JA堺」の情報誌CRAP(くらっぷ)より。 わたしは農業とは無縁ですが、毎月両替の必要にかられてJAの組合員になりました。毎月届けられる情報誌CRAP(くらっぷ)は、このようなうれしいレシピやクイズが載っていて、気に入っ…

丁夫人の嘆き(曹操の後庭) 四十五

丁夫人の嘆き(曹操の後庭) 四十五 「閣下。よろしゅうございますか?」 聞き慣れた声とともに博労の李が姿を現した。 博労はいつの間にか孟徳の耳目(じもく)を統べていた。天性聡い男で、長(おさ)になると言葉つきまであか抜けてきた。耳目、つまり間者であ…

引き裂かれた恋人たち

引き裂かれた恋人たち 前原氏が外国人からの献金問題で外務大臣を辞任した。 下野してしょぼくれていた自民党はこのところ意気軒昂である。 そのニュースを聞いて、心の中のもやもやが晴れないのだ。なるほど五年間で二十五万円の献金、厳密にはいけないこと…

丁夫人の嘆き(曹操の後庭) 四十四

丁夫人の嘆き(曹操の後庭) 四十四 「まるで焚刑じゃぞ。天子になんの罪があって焚刑に処すのじゃ」 孟徳が拳をふるわす。 「われらは泰山に参らねばならぬぞ。天の子なるいと尊いお方にくわえられしこの恥辱を天に訴え、よりどころを無くした魂を慰めねばな…

ニヤンタの予防接種証明書

ニヤンタの予防接種証明書 大きなケージに入れて予防接種につれていった。もちろん、自転車の荷台にケージをくくりつけてね。 動物病院は猫には苦手らしい。あのドアを開けると不安そうな犬や猫がいるんだものね。今回はケージの中で大人しくしていた。 でも…

丁夫人の嘆き(曹操の後庭) 四十三

丁夫人の嘆き(曹操の後庭) 四十三 呂布は并州(へいしゅう)五原郡九原県(内モンゴル包頭西)の出で、字は奉先といった。 漢の五原郡は秦の始皇帝の九原郡で、匈奴討伐軍の駐屯地であった。九原県を守るように長城がのびている。戦国趙の長城だ。その長城の彼方…

丁夫人の嘆き(曹操の後庭) 四十二

丁夫人の嘆き(曹操の後庭) 四十二 世が世ならば、袁隗も袁基も玉柙銀鏤(ぎょくこうぎんる)を下賜され、玉で亡骸は覆われたはずだろう。けれど、袁氏一門への惨い仕打ちをいつまでも噛みしめている暇はなかった。もっと恐ろしいことが行われていたのである。 …

冬の怪談

冬の怪談 我が家から自転車で十分ほど走ると墓地がある。直線距離だともっと近いが、なんせここはもと、村だった。今はS市に合併されてれきっとした市になった。郷土史の冊子をみると道幅は信じられないほど細く、人と人がすれ違うのがやっとだったので、後…

猫も息子もよく嘘をつく

猫も息子もよく嘘をつく この頃、愛猫の抜け毛を集めてフェルトにしてケータイカバーを作る猫好きが増えてんだって。 ↑ 息子は得意そうにいう。 「嘘だ」 「ほんと。ネットで見たよ。ニヤンタの毛をフェルトにしようっと。きれいなシマシマのカバーができる…

丁夫人の嘆き(曹操の後庭) 四十一

丁夫人の嘆き(曹操の後庭) 四十一 大悪人、董卓は国家というのものの有り様を思案していた。恐怖をばらまきながら幼帝を立てて天下を奪ったが、当初のやり口は悪辣であるが、善政を施して永の歳月をやりすごせば簒奪の汚名など払拭できると踏んだ。いかにも…

丁夫人の嘆き(曹操の後庭)四十

丁夫人の嘆き(曹操の後庭)四十 兗州(えんしゅう)東郡は東西に細長い。西は河(黄河)にぶらさがるように張り付き、なかほどになると郡の中央を東西に河が貫き流れる。延津(えんしん)や白馬津をはじめとする黄河の渡し場がいくつかあるゆえに、水運や軍…

丁夫人の嘆き(曹操の後庭)三十九

丁夫人の嘆き(曹操の後庭)三十九 この兄弟が同じ母から生まれたとは到底、信じがたい。無頼な仁(字は子孝)と慎み深くて学問好きの純(字は子和)とは水と油、純は兄を避けていた時期がある。純は十四歳のとき父を亡くし、それからというもの兄と別居した…

丁夫人の嘆き(曹操の後庭)三十八

丁夫人の嘆き(曹操の後庭)三十八 もどってきた博労たちの人数が倍に膨れ上がっている。 「おおっ。あれは」 夏侯惇が相好を崩す。 「お、おっ。子孝……生きとったか」 「生きとったかとはご挨拶じゃねぇか。おれはこの通り元気じゃ。元讓めが捜したぜ。行方…

丁夫人の嘆き(曹操の後庭)三十七

丁夫人の嘆き(曹操の後庭)三十七 わたしたちは 酸棗に向かって進んだが、日ごとに落後者がでた。 「烏合の衆じゃ仕方あるまい。こ奴らの身も心も大義で染めてやらねばのう」 孟徳は流れる雲に目をむけた。 「酸棗にいけばなんとかなりますわい。かの地では…

やったね、道尾秀介氏

やったね。道尾秀介氏、直木賞おめでとう。 とうとうやったね。 土曜日、十五の春から友達しているkさんと難波で待ち合わせして、九十分食い放題の「香港飲茶」でおしゃべりしながら食べた食べた。 苦しくってぶらぶら街ウォーク、ナンバ花月のほうへ足を伸…

丁夫人の嘆き(曹操の後庭)三十六

丁夫人の嘆き(曹操の後庭)三十六 そのとき孟徳は陳留太守張邈(ちょうばく)に属する武将でしかなかった。鮑信は付和雷同する軽薄な男ではない。それだけにその言葉は重い。その場に居合わせた惇はわがことのように頬を紅潮させた。惇は従兄に惚れている。…

丁夫人の嘆き(曹操の後庭)三十五

丁夫人の嘆き(曹操の後庭)三十五 博労の李が孟徳の愛馬の蹄鉄を調べて眉をしかめた。 「ずいぶん馬を責めましたな、これじゃ酸棗まで無理ですわい」 「おお。取り替えてもらおう」 「ようございますとも」 博労が鍛冶場に馬を曳いていく。わたしたちは中牟…